• ボイスドラマ「NAGACHIKA/前編」
    May 15 2026
    本能寺の変。燃え盛る二条御所で、織田信忠を救おうとしていた戦国武将・金森長近。しかし次に目を覚ますと、そこは2026年の高山の高校だった。歴史好き女子高生・知花の体に入った長近は、現代の“歴史”と向き合うことになる。飛騨高山を築いた名将・金森長近。その知られざる想いを描く、「ヒダテン!」歴史ファンタジー作品!【ペルソナ】・金森知花(ちか/17歳/CV:坂田月菜)=高山市街地の高校2年生。レキジョで剣道部・織田信乃(しの/17歳/CV:坂田月菜)=知花の親友。少しだけわがまま・金森長近(ながちか/59歳=本能寺の変の時点での年齢/CV:日比野正裕)=知花と入れ替わる・明智光宏(あけち先生/55歳=本能寺の変の光秀の年齢/CV:日比野正裕)=実は生徒思いの教師【プロローグ:1582年/京都・二条御所「本能寺の変」】◾️SE:襖を開く音『なに!明智光秀が謀反だと!?』『信長様は自害?まことか、まことの話か!』『嫡男(ちゃくなん)の信忠(のぶただ)様は?・・・逃れて、二条御所へ?』『行くぞ!長則(ながのり)!二条御所じゃ!なんとしても信忠様をお守りせねば!』◾️SE:燃え盛る炎の音『遅かったか!おのれ!光秀!御所に火を放つとは!正気の沙汰か!』『ええい!放せ!長則!止めるでない!』『信忠様〜!この長近めがすぐに参りまするぞ〜っ!』◾️SE:炎の轟音【シーン1:2026年/高山市街地の高等学校】◾️SE:学校のチャイム「ハッ!ど、どこじゃ?ここは!」◾️SE:教室の扉を開ける音「はーい、席についてー。歴史の授業、始めるぞー」「信忠!信忠様は!?」「ちょっとぉ、知花。大丈夫?寝ぼけてんの?明智先生、こっち見てるよ」「明智!明智だと!?」「しっ。だまって」「じゃあ、先週の続きなー。織田信長の天下取りまでやったから・・・」「こやつ、上様を呼び捨てに!」「だから、静かにして、って」(※ここ、小声で)「う、うむ。わかった。して、お主は?」(※ここも、小声で)「もう〜、なに言ってんの。信乃でしょ、シノ」(※ここ、小声で)「シノどの。すまぬ。ときに、ここは、どこじゃ?」(※ここも、小声で)「ま〜た、歴史のゲーム?それ放課後にして」(※ここ、小声で)これは、どういうことだ。わしはつい先ほどまで二条御所にいたはず。そうだ、信忠様をお助せんと火の中へ・・・だが、ここは?どこだ?「ということで、教科書128ページ。ここ試験に出るからなー。比叡山延暦寺の焼き討ち。1571年の衝撃的な事件だ」「なに!?」「もっと声落として」(※ここ、小声で)「こ、心得た」(※ここ、小声で)「信長は仏罰も恐れず、山を丸ごと焼き払った。まあ、今で言う『サイコパス』だな」「信乃どの、さいこぱすとは何ものじゃ?」(※ここ、小声で)「和訳すると、ってこと?えっと・・狂人、とか、人でなし、ってことかな」(※ここ、小声で)「なんだと!(※椅子から立ち上がる)この無礼者!」「ちょ、知花!」(※小声で叫ぶ)「ん?どうした?金森。なんだまた の血が騒ぐのか?」「明智どの、よいか。よく聞くがよい。わしもあのとき軍勢にいたからな。あのとき、延暦寺は武装した僧兵(そうへい)の集団だった。上様は、『味方にならなくとも良いが、せめて中立を守れ。さもなくば山を焼き払う』と何度も警告していたのじゃ。それを無視し続けたのは延暦寺の方であろう」「まあ、そんなことはわかっとる。オレも歴史の教師だぞ。じゃあ聞くがな、金森。どうして信長は、僧だけでなく、山にいた女子供まで切り捨てた?」「う・・それは・・・」わしとて、好き好んでそんな行為をするものか。だが、あのとき、上様に逆らえる者などこの世にはいなかった。「なんとか、女子供だけでも逃してやりたかった・・」(※苦悶の言い方)「あ、それ、テレビで見た」「しかもな、オレが許せんと思うのは、信長がそれを家来にやらせた、ということだ。自らは手をくださず、明智光秀と羽柴秀吉に命じた。これを卑怯と言わずしてなんとする」「う・・うう・・・」返す言葉もない。思い出...
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    17 mins
  • ボイスドラマ「たまゆら」
    May 8 2026
    一瞬の出会いが、未来をつくる。1986年と2026年をつなぐ、酒と記憶の物語。酒蔵に漂う香り、受け継がれる技、そして想い。母から娘へ、そして時を超えて紡がれる物語。万葉の歌に詠まれた「たまゆら」――それは一瞬でありながら、永遠に残る記憶。飛騨高山の歴史とともに描く、切なくも温かなタイムリープの物語です・・・【ペルソナ】・依羅伽/瑛里菜(えりか=母:25歳/えりな=娘:25歳/CV:山﨑るい)=市街地で老舗の酒蔵の女性杜氏。1986年と2026年に母娘として同時に存在する。母娘2代とも新しいお酒を開発してきた。新酒は90周年に向けて発売予定。名前は「大吟醸たまゆら」・静流(しずる/30歳/CV:日比野正裕)=上宝村在住。市制50周年の1986年に市街地へ【プロローグ:万葉集】◾️SE:万葉の詠み方で(少し節をつけて)『玉響昨夕見物今朝可戀物』たまゆらに きのふのゆふべ みしものを けふのあしたに こふべきものか【シーン1:1986年11月/依羅伽(市制50周年の賑わい)】◾️SE:町の賑わい(あちらこちらで「おめでとう!」の声)『50周年、おめでとうございます!』「ありがとうございます!よろしければ、できたばかりの新酒、試飲してください」『へえ〜、なんていう銘柄なんですか?』「実はまだ決めてないんです。仮にたとえるなら・・・”たまゆら”かな・・・」『”たまゆら”・・・いい名前だ』「あ、よかったら中でどうぞ」『はい、じゃあ・・・お言葉に甘えて』高山市全体が祝賀ムードに包まれた1986年11月。高山市制50周年を祝うムードが町中に漂っていた。私の名前は、依羅伽。上三之町で・・というか、古い町並で・・・ああ、どうしても言い慣れないなあ、”古い町並”・・・保存地区の選定からもう何年も経つのに・・そう、うちはその古い町並に300年以上続く酒蔵。昔からのお客さんは『加賀屋』と呼ぶ。私は、『女将』として切り盛りしている。まだまだ女人禁制がはびこる世界。うちの蔵でも少し前まで『仕込み部屋』に女性は入(はい)れなかった。私が女将になってから、強引にルールを変えたんだ。何十年ぶりかで世に出す新酒。市制50周年に間に合うように仕込んできたけど、私に言わせると、『完成』はまだちょっと先かな。まずは、このめでたい景気の中で試飲していただくことにした。最初のお客さんは、リュックを背負った青年。DCブランドっぽいトレーナーに、ケミカルウォッシュのジーンズ。地元の人・・じゃないかも・・・『いただきます・・・』店の奥で青年の声がする。私は和らぎ水(やわらぎみず)を取りに水場へ。戻ってみると、店内に青年の姿はなかった。あら、もうお出かけ?お水はいらないのかしら。結構アルコール度数高いお酒だったんだけど。町並の喧騒が木戸越しに聞こえてくる。うちは角打ちをしていないから、店の中は静まり返っていた。【シーン2:2026年5月/瑛里菜】◾️SE:店内にたくさんの外国人(雑踏)「Have a nice trip in Hida!またのお越しを、お待ちしとります!」『セ・ボン(C'est bon)!』(合成音声)おっと!フランス語やったか!ま、いいや。私の名前は、瑛里菜。古い町並に340年以上続く酒蔵で、杜氏として働く。幼い頃から亡き母・依羅伽に付いて、蔵人(くらびと)として学んできた。杜氏になったのは今年、25歳の誕生日。それだけじゃない。母が亡くなってからは『若女将』としても、店を切り盛りしている。そうそう。だから毎日忙しいのよ。さっきまで大賑わいだった試飲カウンターも片付けないと・・・あれ?まだ誰かいる?目を瞑ってお酒を飲んで・・・ってん?あんなおっきな蛇の目猪口(じゃのめちょこ)、うちにあったか?「あ〜、すっごく美味しい。・・・あれ?」「こんにちは・・」「女将さん?・・なんか・・・さっきと雰囲気変わりました?」「え・・?どういうことですか?」「さっきまで割烹着、着てませんでした?」「割烹着?そんなもん、着ませんよ」「なんで?だって・・・あれ?なんかお店の中もナウいし・・」「ナウい?」「こんなカウンターとか、自動販売機なんてありましたっけ?」「自動販売機?」「ほら、...
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    21 mins
  • ボイスドラマ「スワロウテイル」
    May 1 2026
    飛騨・上宝に眠る“失われた財宝”を巡る、ひとりの女性トレジャーハンター。その名は朱羽。またの名は”スワロウテイル”。父から託された地図、ギフチョウの痣、そして戦国時代に消えた黄金・・・点と点だった記憶がつながるとき、運命が大きく動き出す。考古学とロマン、史実と伝説が交差するヒダテン!史上、最もスケールの大きな冒険譚・・・【ペルソナ】・朱羽(CV=小椋美織)=あげは(27歳)=神岡鉱山で働いていた父の遺志を継いだ正体不明のトレジャーハンター。通称は「スワロウテイル」。右肩にギフチョウのような痣がある・静流(CV=日比野正裕)=シズル(29歳)=上宝出身の考古学者。地元の伝説伝承を調べ保護活動を続けている。朱羽にはいつも先を越されるため異常に警戒し嫌悪している・鉄兵(CV=日比野正裕)=てっぺい(故人享年38歳)=朱羽の父。生活のために神岡鉱山で閉山まで働く。一生をかけて江馬氏の財宝を探していた【プロローグ:神岡鉱山2001年】◾️SE:鉱山のガヤ〜遠くでドリルが岩を削る音、鉱石を運ぶトロッコのガタゴトという音『朱羽、ようく聞くんだ』2001年の春。パパが、私の目を見て語りかける。巨大な神岡の鉱山。5歳の私にとって坑道は、地下深く広がる迷宮のように見えた。パパの作業服は、鉱泥(こうでい)で赤黒く汚れている。『神岡鉱山はあと2か月で閉山になる』「うん」『でもな、パパはついに見つけたんだ』「え?なに?」『宝の場所だよ』「ホント?」『ああ、本当さ。パパ、いつも言ってるだろ。”上宝は宝の郷(さと)だ”、って』「上宝っておうちのとこ?」『ああ、そうだよ。神岡と上宝はね、つながってるんだ』「ふうん」『宝の場所を書いた地図は朱羽に預けるから』「どうして?」『朱羽がいないと地図は完成しないんだよ』「わかんない」『それに・・・もしもパパがいなくなっても大丈夫なように』「パパいなくなっちゃうの?そんなのイヤ!朱羽、ひとりになるのは絶対にやだ!」『心配しなくてもいい。パパはいなくならないから』「約束だよ」『ああ、約束だ。朱羽もパパと約束してくれ。今からこの地図の説明をするから、ようく聞くんだ』パパは、9つに折った地図を開く。大きな地図。両手を広げたよりもおっきい。『地図がなくてもわかるように頭の中に入れなさい。閉山するまで。あと2か月の間に』「うん。わかった」『ようし、いい子だ。こっちへおいで』これが、パパと交わした最後の言葉だった。その日の夜。全層(ぜんそう)雪崩。いわゆる『春の雪崩』が池ノ山(いけのやま)の飯場(はんば)を直撃。夜食を食べていたパパは、なす術(すべ)もなかった。「パパのうそつき」ひとりぼっちになった私はどれほどパパを憎んだか・・・だけど、パパとの約束を忘れることはなかった。【シーン1:パパの遺志】◾️SE:キャンパスの大教室「先生、その見解には地質学的な視点が欠けていませんか? 神岡の池ノ山(いけのやま)周辺は、当時から地表に鉱石が現れていたはずです。江馬氏が密かにその一部を掌握していたとしたら?公的な記録に残さず、『隠し銀』として運用していた可能性は否定できないはずです!」「それはあくまで仮説だ。物証がない以上、考古学としては認められないよ」「物証がないのは、探し方が間違っているからです」「君のシミュレーションは面白いが、『単なる願望』に過ぎない。考古学とは、出土した遺物から歴史を組み立てる学問なんだ。宝探しじゃないんだよ」15年後。私は東京の大学で考古学の教授とやり合っている。互いに顔もわからない大教室の一番前と後ろ。岐阜県から招かれた客員教授・静流。フィールドは私の故郷、上宝だという。あ〜。私、ダメなタイプだ、これ。「今日の授業はここまで。また、議論を戦わせよう」ふん。やなこった。そんなことしている時間なんてない。15年前。パパがいなくなったあと、私をひきとったのは、市街地に住む画商。高齢の夫婦だった。養父はかつて神岡鉱山で働いていたという。子どものいなかった老夫婦は私を小学校から中学、高校までいかせてくれた。卒業後...
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    20 mins
  • ボイスドラマ「八百比丘尼の初恋」
    Apr 24 2026
    漢方薬剤師・よもぎと医学生・楸、そして離島出身の医大生・沙羅。美しい風景の中で紡がれる、切なくも温かな物語・・・・よもぎ(29歳/CV:蓬坂えりか)=カフェ「よもぎ」オーナー。漢方薬剤師。楸と出会う・楸=シュウ(22歳/CV:日比野正裕)=歴史好きな医学生。御岳町の旧家出身。医学を学び、医者を目指す。歴史・伝承・伝説が好きなのは母の影響・沙羅(22歳/CV:小椋美織)=楸と同じ大学に通う医大生。友達以上恋人未満。医師のいない九州の離島の出身。卒業後は楸と一緒に離島に戻りたいと思っている【シーン1:美女峠の展望広場】◾️SE:美女峠の野鳥のさえずり「むか〜し、むかし。南に見える山々のずっと奥、秋神川が深く淀む『龍宮淵』のお話。川のほとりに住む長者には、1人の娘がいました。ある晩、長者がどこかから土産をもらってきます。それは龍宮淵から持ち帰った『人魚の肉』。娘にはこう言い聞かせます。『これは禁断の肉。絶対に口にしてはならん』そう言われれば、よけい気になるのが人情というもの。娘は、いたずら心でひとかけら、口に入れてしまいました。最初ほんの一口のつもりだったのが、あまりの美味さについつい食が進みます。気がつくと、全部食べてしまっていました。すると・・・」「不老不死になったんだよね」ttt「そ。これが八百比丘尼伝説のさわり。あとは、楸も知ってるでしょ」「うん。八百比丘尼伝説は日本全国にあるから。不老不死になった八百比丘尼は全国へ旅に出た」「ご名答。娘は尼さんになって、諸国を行脚」「で、ここ美女峠にも立ち寄った」「うん。行く先々で病人の世話をして、癒していたらしいわ」「なんか、よもぎさんとかぶるなあ」「冗談。知ってる?八百比丘尼って、息を呑むほど美しかったそうよ」「それもかぶる」「からかわないで」「ほんとにそう思うんだけどな・・・」「八百比丘尼は行く先々に椿を植えた。ここにもあるでしょ。彼女が杖で突いたところから生えてきた・・・」「ああ、さっきの・・」「厳しい冬を越えても青々とした葉を保ち、真っ白な花を咲かせる椿。不老不死の象徴ね」「椿も薬草なのかな」「とっても優れた薬草よ。椿の花を乾燥させた『山茶花(さんさか)』。止血とか消炎の作用があるの。八百比丘尼は、そうやって人々を癒してたんじゃないかしら」「ますますよもぎさんだ」「私、そんなに年はとってないわよ」「はは・・ねえ、よもぎさん」「なあに?」「もう一度『龍宮淵』へ行ってみませんか?」「もう一度?」「うん。八百比丘尼の話、思い浮かべながら、覗いてみたい」「ひかれちゃうわよ」「竜宮城へ?できるもんなら、行ってみたいよ」ほんの少し距離をとりながら、こちらを見て楸が笑う。あらためて紹介するけど、楸は東京の医大へ通う大学生。春休みを利用して御嵩の実家からバイクで高山へ。もう4月になっちゃったけど、戻らなくていいのかな・・なんとなく、聞きそびれてしまった。楸は毎日のように、夕方薬膳カフェまで迎えにくる。そのままバイクにタンデムしてツーリング。今日は美女峠。・・の展望広場。龍宮橋へ行くならあたりが暗くなる前に出なきゃ。◾️SE:バイクのエキゾースト〜遠ざかっていく【シーン2:山王祭】◾️SE:山王祭の賑わい「すごいな・・・言葉にならない」春の高山祭。山王祭。楸は今まで一度も見たことがないそうだ。御嵩に住んでるのに。最終的に、祭を見てから東京へ帰る、ということになった。楸はバイクを宿泊しているホテルへ停め、2人で歩いて古い町並へ。温暖化の影響で、桜は落下盛ん。春風が吹くたびに舞い上がる、淡い花びら。そのなかを、絢爛豪華な屋台が曳かれていく。金箔と漆黒、そして深紅の幕を纏った屋台。「まるで・・・異世界に迷い込んだようだ」「もしかしたら、エルフにも会えるかも」「え?」嬉しそうに、楸が私を見つめる。やがて始まったのは、からくりの奉納。童子が一瞬にして翁へ変わる『三番叟(さんばそう)』。美女の打掛が荒ぶる獅子に変わる『石橋台(しゃっきょうたい)』。そして、壺の中から龍神が飛び出す『...
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    19 mins
  • ボイスドラマ「さくら」
    Apr 17 2026
    戦国の世。すべてを失った母が、ただひとつ残された願いを桜に託したとき——その祈りは、命を越えて形となった。これは、荘川に実在する桜にまつわる、ひとつの“はじまり”の物語。感動のボイスドラマ「さくら」をぜひお聴きください。【ペルソナ】・咲耶(19歳/CV:岩波あこ)=400年以上前、戦国時代末期に荘川で生きた女性。村へ逃げてきた落武者の手にかかり、夫と娘・さくらを失う・さくら(5歳/CV:岩波あこ)=咲耶の娘。落武者の手にかかり命を落とす。咲耶が鎮魂のために光輪寺に植えた桜の精となって再び現れる・住職(60歳/CV:日比野正裕)=光輪寺の住職。咲耶に桜の植樹を勧める【プロローグ/寒村の落武者】■SE/小鳥のさえずりと吹き荒ぶ風の音「ばかやろう!侍なんてみんな、この世から消えちまえ〜!」叫びながら、あとからあとから熱いものが込み上げてくる。わしの名は咲耶(サクヤ)。武田の軍勢が飛騨へ攻め込んでくるだのなんだのって。小さなこの荘川村まで、そんな噂は入ってきていた。わしは、ここ荘川で生まれ、荘川で育った。板葺き屋根の粗末な小屋に住み、庄川(しょうがわ)のほとりで畑を耕す。祝言を挙げたのは14の春。娘ももうけて、親子3人、貧しくとも幸せな毎日だった。贅沢は言わない。このままソバやヒエ、アワを育てて倹(つま)しく生きていければ・・ただ、そう思っていただけなのに・・・ある日突然、夫は三木自綱(みつき よりつな)の家来どもに駆り出された。こんな貧しい村の百姓まで、戦になると連れていきよるんか。ソバ蒔きが終わってひと月。ソバ刈りがすむまで待ってくれろと頼んだけど。侍なんて、わしらのことは虫ケラやと思うとる。逆らったら、その場で叩っ斬られるだけや。黙って従うしかなかった。結局・・・戦に出かけた翌日。帰ってきたのは、傷だらけの骸(むくろ)。それも軒先まで運んでくれたのは、結(ゆい)の衆やさ。夫が倒れていたあたりは、ソバの白帆(しらほ)が、真っ赤に染まっていたんじゃと。わしは三日三晩泣き明かした。信玄とか、信長とか、どうでもいい。誰が勝とうが、誰が負けようが、そんなもん、知ったことじゃねえ。戦をやるようなやつはみんなクソじゃ。侍なんて、みんな、くたばっちまえ。天に向かって叫ぶわしに、一人娘のさくらが寄り添う。だが、不幸はそれだけではなかった。白川郷の内ヶ島に攻め入った三木の侍たち。返り討ちにあい、敗れた残党が荘川村に流れてきた。村は次々に焼かれ、あちこちで悲鳴が上がる。わしは小屋の中でさくらを抱いて震えていたが・・・◾️小屋の扉を乱暴に開く音手負いの侍が、荒々しく扉を開け、土足で踏み込んできた。わしの腕の中には目を瞑ったさくら。侍は、さくらの手に握られたヒエとアワを見つけて手を伸ばしてくる。さくらが避(よ)けると、怒った侍は引っ張って引きずり出す。「いやぁ!」侍を振りほどこうとするさくら。侍はさらに怒り、こっちへ逃げようとするさくらをうしろから斬りつけた。「さくら!」さくらの持っていたヒエとアワをひったくると侍は小屋を出ていった。わしは、腕の中で動かないさくらの名を呼び続ける。だが、地獄はこれで終わらない。侍は小屋に火をつけた。あっという間に燃え広がっていく。ああ、もうこれですべて終わるんだな・・・わしはさくらを抱いたまま、目を閉じた。【シーン1/光輪寺】■SE/小鳥のさえずり「目が覚めたかな」ここは・・・彼岸・・じゃない・・・光輪寺・・・わしは・・・なんで生きているんだ?「結の衆がおまえさんを火の中から救い出したんじゃ」「火の中・・・はっ!さくら、さくらは!?」住職は申し訳なさそうな顔で、首を横に振った。「残念なことを」「そんな!そんなぁ!」「主殿(ぬしどの)と幼子(おさなご)のためにも、おまえは生きねばならん」住職の言葉は、なにも響かなかった。わしの目の前にはもう、浄土への道しか見えない。夫とさくらの待つ浄土へ。もう一度会うために行かないと。【シーン2/ひこばえ】■SE/小鳥のさえずり誰とも会わず、なにも語らぬ日々。日がな一日...
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    20 mins
  • ボイスドラマ「水原勇気になりたくて」
    Apr 10 2026
    アンダースローのサウスポー、そして・・・ピッチャーは女性!背番号のないエースが、仲間とともにマウンドへ・・・【ペルソナ】・結葵(ゆうき=16歳/CV:未定)=高山市街地の高校1年生。リトルリーグではピッチャーで4番。内気で他人からあまり良い印象はなくいつも仲間はずれ。幼い頃に見た漫画の水原勇気が憧れ・珠望(たまみ=16歳/CV:未定)=高山市街地の高校1年生。マネージャーとして入部。リトルリーグではキャッチャー。結月の実力をみんなに知ってほしいと思っている・さくら(教師=24歳/CV:岩波あこ)=高山市内の小学校教師・稀武(けん=16歳/CV:日比野正裕)=城山高校野球部のキャプテンでキャッチャー【プロローグ:小学校1年生】◾️SE:始業チャイムの音〜教室のざわめき『みなさ〜ん。大人になったらなりたいコトやヒトについて教えてくださ〜い』小学校に入学した春。最初の授業で先生が私たち一年生に尋ねた。『ショウタくんはメジャーリーグの野球選手?』『モモちゃんはユーチューバー?・・じゃなくてVチューバー?』『ユウキちゃんは・・・?』私は、消え入りそうな小さな声で呟く。「水原・・勇気・・」『え?だれ・・・?ミズハラ・・ユウキ?だあれ、それ?・・野球選手?先生ちょっとしらないなあ』わかってもらえなくていいんだ。誰も知らなくなっていい。だけど私には最高のヒーロー・・ううん、ヒロインなんだもん。水原勇気!最高にかっこいいんだから![シーン1:城山高校1年生】◾️SE:入学式のイメージあれから9年。私は高校へ入学した。「城山高校野球部へようこそ!いやあ嬉しいなあ!マネージャーが2人も入ってくれて!」「ちょっとぉ!マネージャーになんてなる気はありません。この子、ユウキはピッチャーで4番。アタシはキャッチャー!」親友の珠望がバッグからキャッチャーミットを取り出して目の前に差し出す。私のバッグもひったくり、ソリッドタイプのグラブを見せる。「うそ!?なんで?おまえらオンナだろ?」「それがどうしたのぉ!この時代にその言葉口にする?」「いや、いくら新設校で全員一年生だからって、野球部にオンナは・・」「なに?女性をばかにしてるの?」「珠望、もうやめようよ。やっぱ無理だって」「ダメよ!あきらめちゃ!あんたの居場所はマウンドでしょ」「でも・・・」「別に喧嘩する気はないけどさ・・学生野球連盟・・学野連のルールでも男子しか認められてないんだよ」「言われなくてもわかってる」「ソフトボールに転向すればいいじゃねえか」「野球とソフトボールじゃ、ラグビーとアメラグくらい違うわ」「それに高校野球は軟球とちゃうぞ。硬球だぞ」「クラブチームで硬球投げてきてんだよ」「なら女子高校野球だってあるだろう。高山にはないけど、越境すれば県内にはあるはずだ。うまくいけば、マドンナジャパンだって目指せるんじゃないか。まだ一年生なんだから」「そんなんアタシたちが目指してるゴールじゃない」「なんだよ、それって」「甲子園で優勝して、プロからドラフト一位で指名される」「あ〜はっはっはっ!なに言ってんだか。学野連でさえ、男子生徒に限る、って言ってるのに、プロ野球なんて・・」「”医学上男子でないものを認めない”ってこと?そんな条項は1991年に撤廃されてんだよ。もっと勉強しろよ」「なんだと!」「珠望、もうやめて・・・」「よし。じゃあ、実力で勝負するか?」「なに?」「一打席勝負。もしバットが結葵の球に当たったら入部はあきらめる」「頭おかしいんじゃねえか。当たったら・・・って」「事実だからしょうがないだろ」「大した自信だな。じゃあ、もしもオレがヒットかホームランなら2人ともマネージャーになってもらうからな」「わかった」「珠望・・・」「心配ないよ、結葵。いつも通り投げればいいだけ」珠望はにっこり笑ってウィンクした。わかってる。珠望は私の投手としての才能を信じ切ってるんだ。それに、私の夢も・・・結局、私はマウンドに立つことになった。勧誘活動が終わる夕方。誰もいないグラウンドに野球部の入部希望者が集まってきた。珠望と...
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    21 mins
  • ボイスドラマ「最初の弁当」
    Apr 3 2026
    突然すべてを失い、高山へやってきた少女・彩羽。不器用な祖父が作る“ちょっと変なお弁当”に戸惑いながらも、少しずつ気づいていく「本当の気持ち」。そして迎えた卒業の日。彼女が祖父に贈ったのは――“最初の弁当”。『最後の弁当』のアンサーとなる、もうひとつの物語・・・【ペルソナ】・彩羽(いろは=16歳〜18歳/CV:坂田月菜)=東京から高山市街地へ引っ越してきた高校1年生。・静(しずか=58歳〜61歳/CV:日比野正裕)=大学新卒以来高山市役所市民課で働く生え抜きの市職員・さくら(CV:岩波あこ)=静と同じ市民課に務める市職員。マイペースで仕事をするさくらを静はいつも厳しく叱責していた。彩羽にとっては相談できる唯一の女性【プロローグ:総合病院/ER病棟】◾️SE:廊下を走ってくる足音「はぁっ」「はぁっ」「はぁっ」◾️SE:病室の音「ママ!パパ!」「返事してよ!」私の世界の中心。大切な二人が、ある日突然、いなくなった。高校入学前の春休み。涙を流す暇さえないまま、慌ただしいお別れ。誰もいなくなった家の中に、親族が集まった。『かわいそうに』『力になるからね』みんなそう言って憐れみの表情を向けてくる。私はうなづくことさえできない。そのあとは声をひそめて話し合い。どこかで誰かがささやく。『誰がひきとるの』『うちは無理だから』『うちだって』最初小さかった声はだんだん大きくなって、頭の中に響いてくる。私はイヤホンをして、LINEを開く。ママと私のトークルーム。最後のメッセージは、『彩羽、卒業おめでとう』・・とハートマーク。私の名前は彩羽。中学を卒業して高校に入学する直前だった。おじちゃんたちはベランダに出てタバコを吸ってる。パパもママも吸わなかったから、灰皿ないんだけどなぁ。家の中ではおばちゃんたちが、身振り手振りを交えて話し合ってる。イヤホンをしてても聞こえるくらい、声のボリュームが上がっていく。『養護施設しかないんじゃない』え・・それって・・・知らない子たちと一緒に暮らすんだよね。高校はどうなるの・・・おうちは・・・?不安で胸が押しつぶされそうになる。そのとき・・・「この子は私が、高山へ連れて帰る!」大きな声がリビングに響き渡った。ざわざわしてた室内がシ〜ンとなる。私は左耳のイヤホンをはずし、横目で声の方を見る。高山のおじいちゃんだ・・・なんか目をウルウルさせて、親戚のおじちゃんたちを睨んでる。おじいちゃんは、ゆっくりと私の方へ歩いてきて・・「もちろん、無理にとは言わないが」「彩羽、私と一緒にくるか?高山へ」と、小さな声で話しかけてきた。後ろでは、親戚のおじちゃんおばちゃんたちが睨んでいる。私は怖くて、下を向いたままうなづいた。すると、”無理する必要はないんだぞ””おじいちゃんに気を遣うことない””1回しか里帰りしたことないんじゃ、まったく知らないとこと同じだ”いろんな声が飛んでくる。私はまたイヤホンをして、「荷造りしてくる」自分の部屋へ戻っていった。【シーン1:古い町並にて】◾️SE:古い街角の雑踏「さあ、ここが古い町並だよ。小さい頃、夏休みに一緒に歩いただろう。覚えてる?」おじいちゃんが優しい声で話しかけてくる。私は親族会議のあと、そのまま高山へ。古い町並は、10年ぶりくらいかな。 あのときは、パパとママに両手を引かれてた。3人でおじいちゃんおばあちゃんについてったっけ。私は小さくうなづく。ちゃんと覚えてるよ。10年前と変わってないよね。「疲れてないかい?彩羽」おじいちゃんは心配そうに尋ねてきた。少し距離をとって歩き、話すときだけちょっと近づく。全然疲れてはないけど、お腹がすいてマジやばいかも・・・コンビニってさっき通ったっけ。「おじいちゃん・・」「ん?どうしたんだい?」「お腹すいちゃったから・・コンビニ行っていい?」「おお、ごめんごめん!そういや、おじいちゃんもお腹すいてきたわ。コンビニより、ラーメンでも食べにいこか?」「高山ラーメン?」「ああ、そうだ」「やった・・」のぞみの中でTikTok流し見した。高山グルメは全部保存済み。そのなかで...
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    22 mins
  • ボイスドラマ「ペイフォワード」
    Mar 27 2026
    たった500円の優しさが、誰かの人生を変えることがある。漢方薬剤師・よもぎと、医学生・楸の出会い。龍宮淵に響く、母の愛と、再生の物語。【ペルソナ】・よもぎ(29歳/CV:蓬坂えりか)=カフェ「よもぎ」オーナー。漢方薬剤師。月に一回程度、高山市街地で買い出しやショッピングを楽しむが、そのときに楸と出会う・楸=シュウ(22歳/CV:日比野正裕)=歴史好きな医学生。御岳町の旧家出身。幼い頃に失くした母は漢方薬に頼り西洋医学の治療を受けなかった。そのせいで命を落としたと思い込んでいる。その反動で医学を学び、医者を目指す。歴史・伝承・伝説が好きなのは母の影響。・魚屋のおばちゃん(妙齢/CV:小椋美織)=市街地の魚屋で旬の食材を扱う。この時期は北陸の海産物。棒鱈や煮いかを売っている。店先には赤い煮いかをズラリと吊り下げている【プロローグ:出会い/高山市街地】◾️SE:高山市街地・朝のざわめき「あ、あれ?あれ〜っ!?足りない・・・現金持ってきてたはずなのに!」『よもぎちゃん。ええて、ええて。また今度ようけ買ってえな』「あかんて、おばちゃん」『次、来るときはもうないで。煮いかも棒鱈(ぼうだら)も』白い湯気の中。豪快に吊るされた真っ赤な「煮いか」。漢方でイカは、『血(けつ)を補う薬膳』。女性に不足しがちな鉄分を補って、月経トラブルやめまいをケアする。あ、誤解のないように言っておくけど・・薬膳カフェで使うよもぎやクロモジは、すべて朝日町の薬草よ。月イチで市街地に行く目的は、新鮮な海産物や加工品。知らない人もいるけど、高山ってお魚が美味しいって有名なのよ。だって、北へ行けば日本海ですもんね。江戸時代、日本海のブリを運んだぶり街道だって・・ああ、寒鰤食べたくなってきちゃった。鰤は寒さから体を守って『腎』を養うし・・『よもぎちゃん。わかった?』「え?あ・・・ごめんなさい!やっぱり、煮いかはやめとくわ。カタクチイワシにする。なら、お金足りるよね?」『ほんなら、両方持ってけ』「あかんて、それは」『ええんやて』「あかん・・」「ええて」おばちゃんとの無限ラリー。その間を割るように覗き込んできたのは・・・「あのう・・・」皮ジャンを着た男の人。品の良さそうな顔立ち。「よかったら、これ使っていただけませんか・・・」そう言って500円玉をおばちゃんの手のひらに。「おやまあ」「結構です。見ず知らずの方にそんなこと・・」「いや、さきほどからの会話、ちょっと聴こえちゃったんで・・・」「あ、いえ。大丈夫ですから・・」「これは、ペイ・フォワード。もし誰か困ってる人がいたら、あなたも同じことをするでしょ・・・」「あ、ちょっと・・」「じゃ、よい旅を・・」そう言い残して立ち去った。私は慌てて体を起こす。「まあ〜。男前やねえ」「おばちゃん、お金と煮いか、あずかっといて。私、ちょっとあたりを探してくるわ」「ああ。転ばんように気ィつけて」どこ行った?必死で走って彼をさがす。それでも、人混みのなか、彼を見つけることはできなかった。肩を落として店に戻ると・・・「やあ」「え?」「おお。ちょうどよかったわ」彼がおばちゃんと話をしている。「このにいさん、さっきの煮いかを思い出してな、自分も欲しくなったんやと」「どうしたんですか?そんなに慌てて」「あなたを探してたのよ!」あ・・いけない。つい口調が・・・「そしゃ決まりやな。この500円はおばちゃんが預かっとく。よもぎちゃん、煮いかとカタクチイワシは持ってけ。その代わり、このお兄さんに、あんたの店でランチでもご馳走してあげるんやさ」「お店やってるんですか」「あ、はい・・いえ、でも、うちの店は朝日町(あさひちょう)よ」「朝日町・・・」「バスの本数も少ないし・・」「ボクはバイクだから大丈夫です」「ほおか」「それに・・・明日、朝日町に行くつもりだったんです」「うそでしょ」「いえ。ホントに。僕、歴史とか民話が大好きで、秋神ダムの底に沈んだ小瀬ヶ洞(おぜがほら)の歴史とか、龍宮淵の伝説を知りたいと思ってました。あ、そうそう。美女ヶ池の...
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